Voice 025. 公認心理師、素朴な疑問Q&A

                            帝京平成大学

                            田代信久

 公認心理師法案は、7月8日に衆議院に再提出されました。そこで、よく見られる誤解を解くためにQ&A形式で現時点で正しいと思われる情報提供を以下に行います。公認心理師ができたら職能団体がしっかりと公認心理師法の適正な運用を要望しなくてはなりませんので、そのためにも法案について理解を深めておきたいと思います。


Q1) 公認心理師は学卒で受験できる資格ですよね?

A1) それは正確ではありません。むしろ誤った見解であると思われます。

 正しくは、学部+大学院の両方で文科・厚労省で定めた科目を履修修得したものに受験資格が与えられます(公認心理師法案7条の1)。

 つまり、大学院修了をして受験をする資格ということが正しい理解であると考えられます。


Q2)学卒でも受験が出来る簡単な資格と聞きましたが?

A)2 それは正確ではありません。

 正確には学卒者が公認心理師の受験資格を得るためは次の3つのハードルを越す必要があります。

 その1 学部において文科・厚労省で定めた科目を履修修得することです。これも、学部卒業に最低限必要な124単位+αを履修するということになります。

 その2 文科・厚労省が定めた施設に勤務する必要があります。こういった場合、その施設は基準が明確化され、かなり制限されたものになります。

 例えば町中のクリニックで受け付けをしていても受験資格が生ずるということにはなりません。

 その3  文科・厚労省が定めた業務に定めた期間従事して初めて受験資格が生じます。これも受付などではなく、公認心理師法案第二条の第一号~三号にどのような業務か具体的に決められています。(認心理師法案七条の2)

 法案より引用しますと

 一 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。

 二 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

 三 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。

 この第一号~三号を定められた期間行うという極めて難度が高く、おそらく、学卒者でも受験可能な公務員心理職がその対象となる極めて限定的なものになるだろうと思われます。


Q3) 医師の指示の下でとあるので、全て医師の指示(承諾)がないと何もできなくなると言われていますが?

A3) それは誤った理解です。医師の指示については前提として、公認心理師法は医事法制でいう指示ではないということを最初に理解する必要があります。

 これは医事法制という大枠の中に公認心理師法は入っていないということなのです。

 そのため指示という文言を使用してはいますが、「医師の指示」の意図は、診断、心理検査、心理療法などの医療行為に近い、あるいは重なる業務をすることから「指示」という言葉が使用されたと考えられます。

 医師が心理師を指示で動かすのではなく、心理師と一緒に治療をやりたいから「指示=より密接な連携」であると理解をすればよいかと思います。

 また、医療関係以外の心理業務のすべてに指示がかかるのではなく、医師の治療行為と関係がある場合に包括指示(細かい指示ではない)がかかるという理解でよいかと思います。


Q4)医療領域以外のスクールカウンセラー(SC)の場合も、通院をしている児童・生徒・学生への面接が、この第四二条によって面接などが出来なくなると聞きましたが?

A4) その疑問も医事法制で言う指示ではなく、この法律で言う「医師の指示」は緊密な連携の情報提供であると理解すればよい事かと思われます。むしろ、学校など医療現場外でも今までは特に定めが無く、個人的関係で連携を取れたり取れなかったりということが是正され、SCなどがリエゾン活動をしやすくなるものと考えればよいかと思いますし、学校としてもSCが外部の医療機関との連携を望んでいると聞いておりますので、その希望に沿った活動がしやすくなると考えればよいかと思います。


Q5) 主治医がいるという限定がつくと、外科医、内科医など通院している場合は全てその指示を受けないと何もできなくなるのではないでしょうか?

A5) それも誤った認識と考えられます。なぜなら、公認心理師法案第四二条2項に「公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。」と定め、クライエントが「心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師」と狭く限定をしてあります。

 これは、精神科・児童精神科、脳外科、神経内科、小児精神科の医師が関わっている場合にのみ「その指示を受けなければならない」ということで、風邪で内科、捻挫で整形外科に通院していても「その指示を受けなければならない」ということはないと理解をすればよいかと思います。