Voice 015. 国家資格の必要性を認識しよう
匿名希望
私は臨床心理士の資格ができるずっと以前から医療現場で非常勤勤務をしてきました。現在も複数の病院に勤務しています。
自分自身にとって資格はなくても殆ど不利益を蒙りませんでした。役に立つと思えばそれなりに厚遇してくれる医師も少なくありません。しかし現状は、特に若い人達をみていると国家資格はぜひ必要だと考えます。臨床心理士はスクールカウンセラーをはじめとする教育界では恵まれた待遇を受けていますが、医療の世界は無資格ゆえに悲惨な状況にあります。
常勤で心理士を雇う施設は少なく、多くの施設で本来心理士の仕事である査定の仕事は言語聴覚士や作業療法士の仕事として定着しています。即ち専門職としての心理士の仕事が既に他職種に取られているのです。また、例えばデイケアでも無資格の心理士に任せることはできないと心理士の他にナースが付き添います。一般に医療現場では無資格者である心理士は一人前とは認められていないのです。
国公立の施設に常勤で雇われている心理士は、専門職扱いではなく事務職扱いですから職種の変更や職場の移動もあり、低賃金です。「せっかく優秀な心理士がいて頼りにしていたのに係長になって移動してしまった」と嘆くのは医師達です。
現場はこのような状況であるにも関わらず、医療現場では、新しい職に就く時、あるいは非常勤では毎年、臨床心理士の資格証明書の提示を求められます。臨床心理士の資格は資質保障に利用され、待遇は無資格扱いなのです。国家資格ではない臨床心理士という「資格」はこのように悪用されているのです。
成年後見人など社会的法整備に伴い、医療現場で心理士に求められる仕事は患者さんの一生を左右する非常に重い責任を伴います。これだけの重責を無資格で行うことが許されていてよいのでしょうか?私もしばしば「この仕事は資格がありますか?」と患者さんから質問されます。
まずは国家資格を持つことが必須です。医師との関係など危惧する声もありますが、現在推進している「公認心理師」は、少なくともないよりある方がずっと良い資格であると私は考えています。とにかく無資格状態を解消し、その後心理士が実力をつけることによってもう一段上の資格づくりを目指すこともできるでしょう。
国家資格推進の経過を見ていると、残念ながら臨床心理士は社会常識に欠しく、視野が狭く、利己的な人が多いことを認めざるを得ません。国家資格がないということがどういうことかわからない人が多すぎます。
現在恵まれた環境で働いている臨床心理士は、「現在よりステイタスが低くなる」「自分たちにとって何の利益もない」等と利己的で狭い視野から反対するのではなく、社会に於いて無資格とはどういうことなのかその現状を理解し、臨床心理士全体が置かれている立場、責任と利益を俯瞰して無資格の解消に協力し、国家資格の推進に協力して欲しいと思います。
自分たちが損をするからと言う理由で国家資格の推進に反対する人々の存在自体が
臨床心理士に対する社会的信頼を失墜していることを理解して下さい。